マーケティングでよく使われる「ペルソナ分析」。具体的にはどういった手法かご存じですか?
この記事では、ペルソナ分析について、その意味や特徴を簡単にわかりやすくまとめています。さらに、ブランドや企業に とってのメリット・デメリットや、実施にあたっての注意点もご確認いただけます。ぜひご参照ください。
目次
マーケティングの「ペルソナ分析」とは?意味と特徴をわかりやすく解説!
マーケティングで言う「ペルソナ分析」とは、商品やサービスを提供する際に一定の顧客像を仮定し、その人に関する詳細な情報を収集・分析する手法です。これにより、単なる人口統計学的な情報を超えて、顧客のニーズや欲求、行動パターン、ライフスタイル、価値観などを把握し、よりリアルなターゲット像を形成することができます。
ラテン語で「人」を意味する「ペルソナ」は架空の人物ですが、市場調査やデータに基づいて現実的な特徴を持たせ、マーケティング戦略の最適化や効果的なコミュニケーションのための指針として活用するのです。
「ターゲット」と「ペルソナ分析」の違いは?
「ターゲット」は、広告やマーケティングの対象となる顧客層全体を指します。一般的な属性(年齢、性別、家族構成など)や地理的情報に基づいて定義されます。
一方で「ペルソナ分析」は、特定の顧客像をひとりの人物として作成し、一般的な属性の他に趣味や行動、ニーズ、価値観などを詳細に理解しようとする手法です。
ペルソナを通じて個々の顧客の心理や欲求に迫ることができ、より効果的なカスタマイズとターゲティングが可能になります。
ペルソナ分析の重要性
ペルソナ分析を活用すると、顧客を架空の人物として具体的に描くことでニーズや好みを深く理解できるため、提供する広告や商品、サービスをカスタマイズし、訴求力を高めやすくなります。
また、ペルソナ分析によって得られる情報は、コンテンツ、プロモーション、キャンペーンの展開に活かされ、顧客との関係強化や新たなアイデアの創出、競争上の優位確立に役立つでしょう。
従って、ビジネスを成功に導くマーケティング手法として大変重要です。
ペルソナ分析のメリット
それでは、ペルソナ分析にはどのようなメリットがあるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
【メリット①】顧客目線の商品開発
ペルソナを用いると、顧客の立場や視点を具体的に理解し、ニーズや希望を明確に把握できます。この情報を元に、顧客が求める商品の開発が可能です。
例えば、ペルソナに特定の趣味がある場合、関連するアイテムやコンテンツを提供すると市場で消費者の興味を引きつけられるでしょう。
顧客目線での商品開発は、競争力を高め人々からの支持を得るための重要な要素です。ペルソナ分析により顧客の声を反映させることは、成功への大きな一歩となります。
【メリット②】顧客の立場で問題点を認識できる
ペルソナ分析により、特定の顧客像を詳しく描き出すことで、彼らの日常や状況を想像しやすくなります。このため、消費者が直面する不満や欲求を具体的に把握し、効果的な解決策を提供することが可能です。
顧客の立場で問題点を認識・理解することで、必要なサービス改善を実施できるだけでなく、ニーズを見出して新たな商品を考案することもでき、総じて市場における顧客満足度の向上を図れます。
【メリット③】社内の認識のズレを防げる
ペルソナ分析は、企業内の異なる部門や社員の間で顧客に対する理解や期待が一致するよう促す役割を果たします。
同じ社内でも、異なる立場や視点から見ると顧客に対する認識にズレが生じることがあります。しかし、ペルソナ分析のデータを共有することで、こうした誤解や差異を防ぐことができるのです。
これにより、社内の意識を統一し、顧客へアプローチを一本化して、組織全体で一貫性ある戦略の実施が可能となります。
【メリット④】精度の高いマーケティングが可能
ペルソナ分析により、広告やプロモーションで精度の高いマーケティングが可能になります。
ターゲットの興味を引く個別化されたコンテンツや情報を提供することで、広告のクリック率やコンバージョン率が向上が見込めるでしょう。さらに、広告費等コストの無駄を省き、限りある予算を効果的に使えます。
精度の高いマーケティングは顧客の満足度を高め、ブランドとのつながりを強化します。また、消費者にとって身近に感じられる広告や商品は、口コミでの拡散効果も期待できます。
ペルソナ分析のデメリット
ペルソナ分析を行う上でデメリットも発生します。事前に確認しておきましょう。
【デメリット①】時間とコストがかかる
ペルソナ分析には、詳細な情報の収集と分析が不可欠です。
顧客の行動パターンや好みを理解するために、市場調査やアンケート、顧客インタビューなど様々なリサーチとデータ解析を行わねばならず、時間とコストを要します。また、複数のペルソナを作成する場合はそれぞれの特性を慎重に研究する必要があり、さらなるリソースが求められます。
しかし、手間暇がかかる一方、正確な情報に基づいて戦略を構築できるため、投資の価値はあると言えます。
【デメリット②】実際の顧客とペルソナとのズレが生じる場合がある
ペルソナは架空の人物であり、推測に基づいて作成されます。そのため、実際の顧客と完全に一致することは難しい場合もあります。
顧客は個々に異なる特性や好みを有しており、ペルソナが持つ特徴や行動とズレが生じることがあるのです。
このようなケースでは、マーケティング戦略が効果を発揮しづらくなる可能性があります。ペルソナと実際の顧客のズレを最小限に抑えるには、定期的なデータの更新や市場の変化に対する柔軟な対応が必要です。
ペルソナ分析の注意点
なお、ペルソナ分析を活用する際の主な注意点を3つ挙げておきます。
【注意点①】ペルソナを設定して終わりにしない
ペルソナの設定は始まりに過ぎず、成果をあげるためには、その後の施策の実施と検証が欠かせません。ペルソナを基にした戦略やキャンペーンを実行したら、その結果を定期的に評価・分析して、効果のある施策を見極めてください。
ペルソナ分析を基にしたマーケティング戦略のサイクルは、PDCA(設定・実施・検証・改善)です。これを繰り返すことで、より良い成果を得られるでしょう。
【注意点②】ペルソナは想像で作らず、合理的な根拠をもって作る
ペルソナは、想像や主観だけでなく、実際の市場データや調査結果に基づいて合理的な根拠を持って作成することが重要です。データや情報に基づかないペルソナは、実際の顧客像と乖離してしまい、効果的なマーケティング戦略の策定が難しくなるでしょう。
正確かつ最新の情報を元にしたペルソナを作成できれば、顧客のニーズや行動をより適切に反映し、実益的なターゲティングや訴求、コミュニケーションが可能となります。
【注意点③】数年ごとに見直しを行う
ペルソナを作成したら、その情報が常に最新かつ正確であるよう定期的に更新してください。市場や顧客のニーズは日々変化するため、一度作成したペルソナが長期間にわたって有効であるとは限りません。
見直しの際には、新しい市場調査やデータ収集を行うことが重要です。また、テクノロジーや社会の変化にも注目し、それに合わせてペルソナをアップデートすることで、顧客との有益なコネクションを維持し続けられるでしょう。
ペルソナ分析のやり方・ペルソナの作り方
ペルソナの作り方は、3つの工程に分けられます。
- データ収集
- データからペルソナを作る
- 具体的な設定を追加してリアルな人物像にする
作ったペルソナを社内で共有、マーケティング施策を練るのがペルソナ分析のやり方です。
1.既存顧客からデータを収集する
自社の顧客が一定数いるのなら、まずは保有しているユーザーのデータを集めたり購買行動の分析を行いましょう。
生の声や本音の意見を聞き出せるのは、ユーザーアンケートやインタビューです。どのような客層にどのような点が支持されているのか、自社の商品・サービスを求める人物像をおおまかに固めていきます。
購入履歴、Webページへのアクセス履歴、SNSのデータを収集
データとして集めやすいのが、Webサイトでの購入履歴や検索履歴、SNSで得られる情報です。
会員登録をしているユーザーなら、性別や年齢層に加えて好みや購買傾向も把握できます。接客販売しているなら、販売員からの聞き取りで性格や行動・志向も分析可能。
Webサイトでは購入に至った人のアクセス履歴やページビュー数、滞在時間など客観的なデータが集められます。精度はやや低くなりますが、SNS上にいるユーザーの特性や行動パターンもペルソナ作成に有用な情報です。
ユーザーアンケートの実施
ユーザーにアンケートをとる方法は2通りあります。
1つは既存ユーザーに対してアンケートをとる方法です。メールや店頭で、会員登録している人や購入者に対して行います。
もう1つは、よりオープンに解答者を集める方法。SNS上でアンケートをとったり、リサーチ会社に依頼して調査してもらう方法もあります。
ユーザーインタビューの実施
インタビューにはいくつか形式があり、それぞれに違うメリットがあります。
- 1対1で対話:選別した1人のユーザーに対してより深く話を聞き出せるため、具体的なペルソナの形成に役立ちます。
- 実際の利用シーンを観察、リサーチ :実際に利用してもらいながら聞き取りを行う方法です。本音を聞き出しやすく、言葉にはできない行動パターンも観察できます。
- 座談会形式: 実地集合、またはZoomなどをで複数人に対してインタビューを行う方法です。潜在的な考えを表に出せたり、一見多様な考え方でも共通する傾向があればペルソナを作りに大きく役立ちます。
2.得られたデータを整理し、ペルソナを創造する
調査で集めたデータは、項目別に整理していきます。個人情報をまとめるだけでなく、行動パターンや考え方を傾向別に分けていきましょう。サービスや商品の購入に至るには、なにか共通の傾向があるはずです。
データの整理例
- 年齢や性別、勤務形態、家族構成の傾向
- 行動パターン(アクティブ派、インドア派など)
- 共通する悩みや課題が発生するシーン(仕事、家庭内、オフの日など)
悩みや課題の傾向がまとまると、具体的なペルソナの創造に大きく前進します。
3.基本情報だけでなく、具体的な人物像を描く
ペルソナの基本情報を作り、まとめたデータの傾向に合わせた脚色を加えてリアルな人物像を作り上げていきます。例えば「30代パート主婦」ではなく具体的で実在するようなプロフィールを作りましょう。
人物像の例
- 31歳女性
- 家族構成:3人家族(夫、2歳息子)
- 仕事:医療事務、フルタイムパート
- 住まい:賃貸マンション居住
- 性格:流行を追いかけるのが好きだが、今は育児と仕事で十分に楽しめていない
- 趣味:映画鑑賞
- 仕事の目標:正社員希望で、関連する資格を取得したい
- プライベートの目標:一人時間を充実させたい
イメージに合った人物写真もあると、より具体的なペルソナ像が描けます。ペルソナが出来上がったら、商品の検討・購入に至るまでのストーリーを作成します。
4.完成したペルソナを社内で共有する
営業、広報、デザイナーなど、業種を横断してペルソナを社内で共有しましょう。ペルソナの設定が具体的で細かいほど、業種の違いによる認識のズレを小さくできます。市場の動向に合わせ、ペルソナは随時更新していきましょう。
ペルソナ分析の効果的な活用法
ペルソナ分析の最大のメリットは、顧客目線で精度が高いマーケティングができる点です。具体的には以下の3点で特に強みを発揮し、活用できます。
- 顧客ニーズに合った商品開発ができる
- 訴求力、レスポンスの高いコンテンツの作成
- ターゲットを絞った広告の打ち出し
ペルソナを設定することで、どのようなニーズを持った客層にアプローチすべきかが明確です。効率がよく、ターゲット層の心をつかむマーケティングが可能になるでしょう。
①顧客ニーズにあった商品開発・商品展開
創造したペルソナは商品・サービスを利用する前提で作られています。「いつ」「どこで」「どんな目的で」など、ペルソナを通して具体的な顧客ニーズがくみ取れるのが特徴です。
例えば、20代男性向けに売りたいヘルシーな宅配弁当があったとします。ただ若い男性向けとしても、どのような人に対してメリットがあるのか社内でも認識が異なりニーズが捉えられません。
そこで「25歳会社員、毎日仕事帰りにジム通いしていて体脂肪10%以下が目標」というペルソナを作ったとします。「低脂肪・高タンパクは絶対条件」「帰宅後すぐに食べられる手軽さも欲しい」など細分化されたニーズを顕在化できます。
②顧客の求めるコンテンツ作成の指針を決定
具体的なニーズが想定できると、どのようなコンテンツだとユーザーに対して訴求力があるのか指針を決定しやすいです。ペルソナに設定したストーリーをコンテンツ化して、ブランドイメージを発信することもできます。
ペルソナが定まっているため、以下の点も設定しやすいです。
- ユーザーにとって価値がある情報はなにか
- 認知させる最適なチャネル、発信者
- ファンになってもらうために必要なもの
ニーズのある層にコンテンツを見つけてもらいやすく、知りたい情報が得られる有益なものという良いイメージの定着も図れます。
③ターゲティング精度が高い広告の展開
ペルソナ分析に基づいたターゲティングは、対象がブレにくく明確です。単純にターゲット層だけを対象にすると、マーケティング方法によっては訴求先にズレが生じてうまくブランドを形成できません。
ニーズが明確だと、どのようなマーケティングが心理的に購入につながりやすいのか戦略を練りやすいです。仕掛けるタイミング、メディア、アプローチ方法など、ニーズを持った人に刺さる広告が打ち出せます。
④顧客が使いやすいサイト設計やUI/UXの改善
UI/UXデザインにおいては、より快適で使いやすいサイト設計のためにペルソナ分析が役立ちます。一般的に広く見やすい、使いやすいサイトを目指すと、メインユーザーが使いにくく感じる場合もあります。
メインユーザーの傾向からペルソナを作ると、直感的に快適なデザインが見えてきたり、次の行動を読めてストレスのない設計が可能になります。ペルソナになりきることで、Webサイトの改善点も見つかりやすいです。
ペルソナ分析の実例・実践例
実際にペルソナ分析を行い、成功につなげた企業の事例を3つ紹介します。どのようにペルソナを設定し、実践したのか詳しく見ていきましょう。
【実例1】スープストックトーキョー
「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」は、女性が1人で入れるファストフードを目指して立ち上げられたスープ専門店です。1999年の立上げ時「カウンターで1人スープをすする女性のイメージ」をもとにペルソナ「秋野つゆ」が設定されました。
東京都内在住の37歳女性、経済的に余裕があるバリキャリというだけでなく、趣味・嗜好まで細かな特徴も設定されています。例えば「シンプルでセンスの良いものを追求する」「フォアグラよりレバ焼きを頼む」などです。
秋野つゆが好んで通いたくなる立地や外観、雰囲気、メニューを立ち上げ以来一貫して追求。全国に約60店舗を展開するまでに成長した、ペルソナマーケティングの成功事例です。
【実例2】B.LEAGUE
日本のバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」は、アプリユーザーの分析からペルソナを設定、狙い通り女性ファンを獲得しています。
他のスポーツにはない特徴「高い女性ファン比率」「会員の平均年齢の若さ」をもとにSAMITと呼ばれるペルソナ戦略を展開。特に、まだ観戦したことはないけど興味はある「観戦意向層」のペルソナ分析を進めています。
選手カードコレクションや気になるチームのニュース配信など、オン・オフシーズン問わず女性ファンの心を掴むコンテンツを作成。アプリが女性ファンを獲得したことで、チケットやグッズの購入にもつながっています。
【実例3】FMVキッズ(富士通株式会社)
FMVキッズは、富士通株式会社が提供するパソコン関連の知識やプログラミングなどを学べるサイトです。2007年立ち上げ当初は、「学校の先生」「小学校高学年」をターゲットに設定。ターゲットユーザーの利用実態を反映しておらず、社内でも認識のズレがあり大きな課題がありました。
サイトを改善すべく取り入れられたのが、さまざまな調査やインタビューから作り出された3人のペルソナです。小学生の女の子とその保護者、学校の先生に性格や特徴を細かく設定し、それぞれのペルソナになりきってレビュー。
制作側では気付けなかったアイデアが次々と生まれ、製作者視点の排除とユーザー視点での議論の積み上げで品質の向上に成功しました。結果として外部団体からも高評価され多くの賞を受賞、この事例を載せたハンドブックの公開も大きな反響を呼びました。
まとめ
様々なメリット・デメリットがあるペルソナ分析。注意点を踏まえて適切なペルソナを作成し、マーケティング活動にお役立てください。