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エスノグラフィーとは?意味と特徴を解説 – 市場調査、参与観察との違いは?

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エスノグラフィーとは?意味と特徴を解説 – 市場調査、参与観察との違いは?

マーケティングでも使われる「エスノグラフィー」という手法。何のことかおわかりですか?聞きなれない言葉かもしれませんが、ご心配なく。

この記事では、その意味や特徴、手法、メリット・デメリットなどをわかりやすく簡単に説明しています。ぜひご一読ください。

目次

エスノグラフィーとは?意味と特徴をわかりやすく解説!

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エスノグラフィーとは、ギリシャ語のethnos(エスノス=民族)とgrapho(グラフォ=書く)の派生語で、特定の民族や部族の文化・生活を記述する方法を指します。

人類学や社会学では、研究者が対象となる文化や社会集団に深く関与し、その内部の事象や習慣を深く理解するために用いられます。

マーケティングにおいては行動観察調査とも呼ばれ、日常生活の中で消費者の行動や感情を観察し、隠れたニーズや購買プロセス、心情を把握して製品開発やマーケティングに活かす手法です。

消費者中心のアプローチであり、競争力の向上を図るための定性調査の一種です。

参与観察との違いは?エスノグラフィーとの関係

参与観察は、調査担当者が対象の文化や集団に実際に参加し共に行動することで情報を収集します。直接的な経験からターゲットの言動を理解し、深い洞察を得ることが目的です。

一方エスノグラフィーは、参与観察を中心としつつ、さらに広範なデータ収集手法を組み合わせて文化や集団について探求します。インタビューや資料収集、観察記録の分析なども含まれます

両者は深い理解と洞察を探る点で共通していますが、エスノグラフィーは参与観察を基盤に、より包括的なアプローチで背後にある慣習・価値観・社会的構造を詳細に理解する手法です。

エスノグラフィーの重要性

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エスノグラフィーでは、対象集団に実際に参加し関係を築きながら情報を収集するため、消費者行動の理解、コミュニティ内のダイナミクスの解明、トレンドの変化の追跡などが可能になります。さらに、行動背後の動機や感情の意味を明らかにすることで、適切な戦略の策定や持続可能な関係の構築も可能です。

多様な文化を尊重し、相互理解を促進する役割も果たすエスノグラフィーは、単なる数値データ以上のものを得られる手法として大変重要です。

エスノグラフィーのメリット

まずは、このエスノグラフィーを行うメリットについて見ていきましょう。

【メリット①】リアルな消費者の行動が観察できる

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メリット①は、リアルな消費者の行動を直接観察できる点です。例えば、店舗での商品選択や製品の使用時の反応、ウェブサイトの閲覧行動などを観察の対象となります。

これにより、消費者が影響を受ける要因や直面している問題点を把握し、マーケティング戦略の策定や改善に役立てることができます。

【メリット②】日常に潜む潜在的ニーズを発見できる

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メリット②は、日常に潜む潜在的なニーズを発見できる点です。顧客が特定の製品を使う際に発生する可能性のある不便や課題、未解決の欲求などが浮き彫りになるからです。

エスノグラフィーによる観察は、通常は捉えにくい消費者の内心の希望を捉えるための有効な手段となり、新たな製品やサービスの開発方向を示すことができるでしょう。

エスノグラフィーのデメリット

また、エスノグラフィーを実施する際には、以下のようなデメリットにも気を付けてください。

【デメリット①】対象者の選定や調査時間の確保など手間がかかる

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デメリットとしては何より、対象者の選定や調査時間の確保に手間がかかる点が挙げられます。適切な対象者を見極め、実地調査に向けたリソースを用意し、文化や集団を理解しながら関係を築くのに時間を要するため、計画の段階から労力を惜しむことはできません。

データ収集と分析のバランスを取りつつ、周到にプランを進めてください。

【デメリット②】スキルのある調査員が必要

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もう一つのデメリットは、スキルの高い調査員が必須である点です。正確な情報や深い理解を得るには、対象文化の理解力や参加観察のスキル、適切なコミュニケーション能力やデータ収集の知識などを担当者が有している必要があります。

調査員に適切なトレーニングと準備を行うことで、高品質なエスノグラフィーの実施が可能となります。

エスノグラフィーの実践方法

メリット・デメリットを踏まえた上で、エスノグラフィーの実践方法を6つのステップで詳しくご紹介します。

Step1:エスノグラフィーを行う目的を明確にする

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まずは、調査の目的を明確にしましょう。対象とする年齢や性別、職業などを選び、消費者の購買行動や習慣といった具体的に調べる目標・問いを設定します。

はっきりとした目的を打ち出すことで、エスノグラフィーの方向性を示し、効果的なデータ収集と分析が可能となります。

Step2:エスノグラフィーで調査したい事柄を列挙する

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次に、調査したい事柄を列挙します。目的に基づいて、消費者の購買行動、意識や心情、製品の使用体験、購買の背後要因、コミュニケーション、習慣、購買決定の過程、消費者間の相互作用など、具体的な項目を書き出してみましょう。

これにより、調査の方向性を明確にし、有益なデータ収集と分析に向けたガイドラインを得られます。

Step3:調査対象者を選定する

目的に適した調査対象者を選定しましょう。主な選定方法は、3通りあります。

対象者の選定方法①ヘビーユーザーにモニターを依頼

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対象者として商品のヘビーユーザーにモニターを依頼する方法があります。「常連客」に日常の使用行動や感想を記録・提供してもらうのです。製品やサービスについて深い知識と経験を持つ熟練ユーザーからは、信ぴょう性ある有益なデータを得られます

対象者の選定方法②調査会社に紹介してもらう

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専門の調査会社に、目的やニーズに合わせた特定の属性を持つ対象者を選定・紹介してもらう方法も有効です。多様な対象者を迅速に選び、専門的なサポートを受けて効率的で信頼性のある調査を実現できます。

対象者の選定方法③社員の家族・友人・知人に依頼

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社員の家族・友人・知人など既存の関係を通じて対象者を選ぶことも、リアルな行動と意見を得られる方法です。社員のネットワークを通じて依頼できるため協力の獲得が容易であり、深い洞察を得やすくなります。

Step4:エスノグラフィー調査の実施

いよいよ調査の実施です。フィールドワークを通じて対象者の行動や環境を観察し、データを収集しましょう。

調査のポイント①メモだけでなく写真や動画など映像記録も残す

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調査では、メモだけでなく写真や動画も残しましょう。映像はリアルな状況を捉え、データを補完します。また、分析や報告の際にも有益で、特定の行動パターンや環境の特徴を説明し、結果を裏付ける証拠となります。

調査のポイント②生活環境、インテリアも重要な要素

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生活環境やインテリアも、消費者の行動や意識、好みなどを把握する上で重要な要素です。ライフスタイルや行動の特徴を反映する部屋やアイテムの配置を観察することで、特定の価値観や習慣の理解を深められます。

調査のポイント③自社以外の愛用品なども確認しよう

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自社以外の愛用品の確認もお忘れなく。対象者が使用している他社製品をしっかり観察してください。競合他社の市場占有率を含む全体の理解と隠れたニーズの発見につながり、自社製品の改善や戦略の策定に役立ちます。

調査のポイント④エスノグラフィー調査終了後にインタビューを実施

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エスノグラフィー調査後は、取得したデータに関するインタビューの実施も欠かさずに行いましょう。これは、対象者の主観的な視点を理解し、観察データを補完するためのプロセスです。調査結果の信頼性と洞察の質を高めましょう。

Step5:実施したエスノグラフィーを振り返る

調査が完了したら、実施したエスノグラフィーを振り返り、マーケティング活動に役立ててください。

振り返りポイント①気づいた行動を書き出していく

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振り返りの際に気づいた行動を書き出すことで、対象者の言動を細かく洞察し、背後の意図やパターン、変化の推移を把握しやすくなります。言葉以外の表情やジェスチャーも記録し、意味を読み取りましょう。

振り返りポイント②”不可解な行動”にこそ潜むニーズ

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また、不可解な行動にこそ知られざるニーズが潜んでいることも。観察中に起きた通常の行動から逸脱する行為に注目することで、消費者の潜在的な欲求を発見し、市場を先取りした新たなビジネスチャンスを見つけられます。

Step6:調査結果をまとめ、共有する

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最後に、収集したデータと洞察を整理し、ストーリーとしてまとめ、報告書やプレゼンテーションを通じて関係者と共有してください。エスノグラフィー調査の背景、目的、実際の実施方法、洞察、裏付け、それに基づく提案や改善を順に伝えると良いでしょう。

これにより、チーム全体で一貫性のある判断を行うことが可能になります。

まとめ

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時間もかかり、専門知識が不可欠なエスノグラフィー調査ですが、得られるデータはマーケティング活動に大変有益です。上手に活用してください。

監修者

佐々木 拓弥

ゲンダイエージェンシー株式会社 営業企画開発部 部長

1993年生まれ。2015年当社入社。さいたま営業所を皮切りに2拠点の総合営業職を経験したのち、優れたマネジメントスキルを評価され、本社営業企画開発部に転ずる。2024年、営業企画開発部長に就任(現任)。
当社ゲンダイエージェンシー株式会社において革新的取り組みであったインサイドセールス体制の構築と拡大・強化を推進するキーマンとして活躍し、現在はデジタル系商材の開発・拡販のマネジメントも担当している。
座右の銘は「志低ければ、怠惰に流れる」。松下幸之助が残したこの言葉は、彼のマーケティング活動やマネジメントの指針となっているこのこと。
社内外のマーケティング系セミナー/ウェビナーでのスピーカー実績も多く、その豊富な経験と知識を活かし多方面に活躍中。

執筆者

AdSELL編集部

「広告主と媒体社をつなげるメディアポータルサイト~AdSELL」の企画段階から参画し、サービス立ち上げメンバーを中心に、コンテンツ担当セクションを組織しています。
私たちが目指すのは、日本全国のビジネスパーソンに役立つ、マーケティングのノウハウや情報、事例をわかりやすく紹介すること。具体的な事例を交えて情報を提供し、読者様がすぐに実践できるような生きた情報をお届けします。読者様の「とは?」「なぜ?」という疑問に対する答えを、タイムリーに発信することを心がけています。

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