ステルスマーケティング(ステマ)という言葉をご存知でしょうか。SNSや動画投稿サイトなど、インターネットを通じた発信が溢れている昨今、「ステマ」は大きな問題として捉えられ、ときには炎上のきっかけにもなります。
この記事では、ステルスマーケティングとは何か、なぜ問題視されるのか、そして実例や注意点もご紹介します。
目次
ステルスマーケティングとは?意味と特徴をわかりやすく解説!
ステルスマーケティングとは、消費者に商品やサービスを宣伝する際に、広告であることを隠して宣伝を行う行為のことです。この手法は、ソーシャルメディアや口コミプラットフォーム等を用い、消費者の信頼を勝ち取るために使用されます。
企業・製品に関係のない第三者の口コミや評価に見えるため、消費者の信頼を得やすく、口コミやシェアにつながるため、バズを発生させやすいという特徴があります。一見、宣伝効果が高く話題になりやすい、と良いことづくめに見えるステルスマーケティングですが、大きな問題を抱えています。リスクについてもしっかり把握して、適切な宣伝手法を選択しましょう。
ステルスマーケティングはなぜ悪い?問題視される理由
ステルスマーケティングは、広告とは明示せずに、あたかも第三者や一般の消費者が製品やサービスについて語っているかのように演出します。これにより、消費者は自分たちが広告を見ていることを知らないまま、商品・サービス情報に接触することになります。
恣意的な、あるいは虚偽の口コミやレビューは消費者を欺く行為とみなされ、信頼性の欠如を招く要因となります。発覚すればブランドに対する信頼を失い、炎上や不買運動、ネガティブな口コミが増加する可能性が高まります。
日本でも2023年10月からステマが規制の対象に
消費者を騙す宣伝方法といえるステルスマーケティングですが、日本でも令和5年10月1日から景品表示法による規制が強化されています。
ステルスマーケティングは「景品表示法違反」です
もともと景品表示法は、実際の商品よりも優良だと誤認させる広告を禁じるものであり、広告であることを隠す「ステマ」についての言及はありませんでした。
今回の変更で、景品表示法の不当表示に「事業者による商品・サービスの表示であることを消費者が判別するのが困難であるもの」を追加することになりました。(景品表示法第5条第3号)これにより、広告であることを隠して宣伝する行為に対して法的措置が取られることとなります。
ステマ規制に違反した場合の法的措置・罰則
違反した場合、事業者に対して消費者庁が必要な必要な指導及び助言を行います。しかし事業者側が正当な理由なくこれを拒否した場合は、その旨が公表されます。
消費者庁から指導及び助言の通達が来た場合は、すみやかに対応するようにしましょう。
ステマ規制の対象となるのは?
ステマ規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)のみです。
企業から広告・宣伝の依頼を受けた、広告代理店、インフルエンサー、アフィリエイター等の第三者は規制の対象となりません。
第三者へ宣伝を依頼する場合は、事前にガイドラインを提示する、広告内容を確認する等、ステマ行為を行わせないよう今まで以上に注意しましょう。
ステルスマーケティングを行うリスク
ステルスマーケティングは、宣伝効果が高そうに見える一方で、多くのリスクを伴うマーケティング手法です。具体的には以下のようなリスクが存在します。
【リスク①】違法行為である
2023年10月からステルスマーケティングは違法行為に該当します。
景品表示法に違反しステマを行った場合、再発防止を求める措置命令が出るとともに広告を依頼した事業者名が公表されます。また、従わなければ懲役や罰金等が科される可能性もあります。広告主や関与する企業は、法を遵守して宣伝戦略を練る必要があります。
【リスク②】消費者を騙す行為であり企業の信頼感低下に繋がる
ステルスマーケティングは、消費者に対して虚偽を用いる宣伝方法であり、誠実でない行為と受け止められる可能性があります。
消費者が広告とは気付かずに情報を受け取り、その後騙されたと気付いた場合、信頼感の著しい低下は避けられません。信頼性の欠如はブランドイメージにも大きな悪影響を及ぼします。
【リスク③】炎上する可能性が極めて高い
ステルスマーケティングが発覚した場合、SNSなどを中心に炎上するリスクが非常に高まります。
消費者や報道機関、競合他社などからの非難や批判が広まり、不買運動や株価の低下といった影響など、ブランドの信用と売上の両方に深刻な損害を与える可能性があります。また、炎上に対する対応のコストや信頼と売上の回復にかかる時間も考慮すべきリスクです。
ステルスマーケティングの主な種類・手法
ステルスマーケティングには、さまざまな種類や手法が存在します。以下に、ステルスマーケティングの主な種類と手法を紹介します。
口コミサイトに投稿する「なりすまし型」
広告主や関係者が、口コミサイトやレビューサイトに自社の製品やサービスに関する偽の口コミや評価を投稿する手法です。
これらの投稿は、一般の消費者によるものと見せかけ、信頼性を高める目的で行われます。広告企業が自演で行うほか、報酬を支払って口コミを依頼する場合もあります。
影響力のあるインフルエンサーに報酬を渡す「利益提供型」
影響力のあるインフルエンサーやブロガーに、報酬や無料の商品を提供し、特定の商品やサービスを肯定的に紹介してもらう手法です。
商品・サービスのターゲット層に影響力のあるインフルエンサーに依頼する場合、広く情報が拡散され、またインフルエンサーの信頼を借りることができるため非常に強力な方法になります。しかし、拡散力が高い分、発覚した場合は一気に世論が的に回るリスクがあります。
ステルスマーケティング疑惑を起こさないためのポイント
広告を用いる際には、ステルスマーケティングを疑われないよう注意する必要があります。ステルスマーケティング疑惑を回避し、信頼性を保つためのポイントを以下に示します。
<広告><PR>表記は必ずつける
広告コンテンツを公開する際には、明確な表示を行いましょう。
コンテンツに「広告」や「PR」といった表記を加え、消費者に広告であることを明示的に伝えることが必要です。公開前にダブルチェックを行う、広告代理店や制作会社に依頼した場合でも必ず自社でチェックを行う等、表記漏れがないように体制を構築しましょう。
提携先インフルエンサーやアフィリエイターの投稿を確認する
インフルエンサーやアフィリエイターと提携する場合、その投稿内容を確認しましょう。
自社で作成したコンテンツでないとしても、自社の製品にステマ疑惑がつけば信用の低下に繋がります。消費者に対して正確な情報を提供し、誤解を招かないようにするために、提携先のコンテンツに対するチェックが重要です。
実際にはない効果効能や機能を明記しないよう提携先へ指導する
提携先に対して、注意べきは「広告」の表示だけではありません。
景品表示法に違反する内容として、誇大な表現や実際には存在しない効果や機能を紹介しないように指導しましょう。また、医薬品や化粧品といった特定の分野では、薬機法等の表記に関する法律も併せて遵守するよう確認が必要です。
第三者である消費者の口コミを促す行為は、ステマに該当しない
ステルスマーケティングとは異なり、第三者である消費者の口コミを促すことは許容されています。
サービスを利用した消費者が自ら書くのであれば、口コミに虚偽はありません。ただし、高評価を強要するなど口コミ内容を操作しようとした場合はその限りではありません。
実際にあったステルスマーケティングの例
ステルスマーケティングは、さまざまな業界やプラットフォームで実践されてきました。以下に、実際に起こったステルスマーケティングの例をいくつか紹介します。
①芸能人によるペニーオークションの口コミ投稿
2012年、複数の芸能人が金銭を受け取って不正なペニーオークションサイト(入札手数料オークション)の紹介を行っていたことが発覚しました。
紹介されたサイトは入札しても落札できない仕組みのオークションサイトで、芸能人たちは実際には落札していないのに落札したかのように見せかけた投稿を行なっていました。運営していた運営サイト経営者4人が詐欺罪などで逮捕されています。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/8527
②食べログへの好意的な評価によるランキング操作
「食べログ」は飲食店の広告ではなく、利用者が口コミや評価を書き込み、それに基づいたランキングを提供するウェブサイトです。
しかし2012年、飲食店に好意的な評価を書き込み、ランキングを操作するために金銭を受け取る業者が前年12月までに39社も存在していたことが明らかになりました。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/8527
③架空の映画評論家 デビット・マニング事件
米国の映画配給会社が、自社映画の宣伝として架空の映画評論家「デビッド・マニング」によるねつ造された映画評を使用し、それが発覚したことで損害賠償の請求につながりました。
同社は2001年に週刊誌上でデビッド・マニングの評論を掲載し、自社映画を高評価するコメントを載せました。しかし、後にこの評論家は実在せず、コメントは自社のねつ造であることが発覚しました。この事件は、広告宣伝における透明性と誠実性の重要性を再確認させる事例となりました。
④漫画家(インフルエンサー)によるTwitterへの「アナと雪の女王2」感想漫画投稿
映画『アナと雪の女王2』公開後、複数人の漫画家がSNSで感想を述べる漫画を投稿しました。
同日に同じハッシュタグつけた感想漫画が投稿されたことからステマ疑惑が浮上し、後にウォルト・ディズニー・ジャパンが報酬を支払って依頼をしていたことが明かされました。
まとめ
ステルスマーケティングは、広告やプロモーションの一環として用いられていましたが、消費者を騙す手法であるとして規制されています。
この記事では、ステルスマーケティングの意味や特徴から、なぜ問題視されるのか、また日本での規制について触れてきました。企業としてステルスマーケティングを行わないことはもちろん、疑惑を向けられることのないようコンテンツの管理や提携先のチェックなどの対策を徹底し、法と自社のブランド価値を守る広告運用を行いましょう。