OODAループとは、もともとは空軍パイロットが戦況に応じて臨機応変に対応するための戦術のひとつでした。近年はフレームワークのひとつとして、PDCAサイクルと比較されることが多くなっています。
この記事ではマーケティングでOODAループを取り入れるメリットや、PDCAサイクルとの違いを解説。OODAループの手順を分かりやすく解説します。
目次
OODAループとは?意味と特徴をわかりやすく解説!
OODAループ(読み方:ウーダループ)とは、ビジネスシーンだけでなくスポーツや普段の生活でも使える思考方法のひとつです。OODAは4つの英単語の頭文字から成り立っています。
- Observe(状況の観察)
- Orient(方向性を定めて戦略を立てる)
- Decide(決定)
- Act(実行)
4つの工程は一方通行ではなく、前に戻ってやり直しができるのが特徴です。市場の状況に合わせて方向性や戦略の練り直しを繰り返す(ループさせる)ため、環境の変化に対して臨機応変に対応できます。それぞれの工程について、より詳しく見ていきましょう。
①Observe(状況の観察)
Observe(状況の観察)を行うことで、見当違いな思いつきに基づいた施策の提案を防ぎます。外部の環境だけでなく、社内の環境変化も観察が必要です。例えば以下の点が観察ポイントとなります。
- 市場全体の傾向
- 競合他社の動向
- 商圏内の環境の変化
- 消費者間の流行
- 社員間でどの程度情報共有、意見交換ができているか
ただ資料化して集まった情報を見るのではなく、自ら現在の状況を観察・生のデータを集めることで次の戦略立てにつなげます。
②Orient(方向性を定め戦略を立てる)
観察で得た客観的な情報を分析し、今の状況とどのように行動すべきか方向性を定める工程です。具体的には、以下の3点を分析して情報をまとめていきます。
- 観察で得た生データと現状から、現在の施策の問題点を見つける
- 消費者の流行と市場・競合他社の動きから、自社ならではのニーズを見つける
- 現在の社内状況からニーズに対してどう動けるかを考える
できるだけ多くの視点で上記の分析を行い、社内でマーケティングの方向性を定めていきます。
③Decide(実行したい施策を決定)
定まった方向性の中で考えられる施策を複数出し、検討を重ねて決定する工程です。現在の問題点、市場の状況から考えられるニーズ、社内環境の3つから具体的に実行できる施策を定めます。
- 問題点をどうしたいか
- どうしたら問題点を解決し、ニーズを獲得できるか
- どの方法なら実行可能で最適か方法か
方向性はすでに決まっているため、極端に目的がブレた施策案は出にくいです。
④Act(施策を実行)
決定した施策を実行します。OODAループは実行で終わりではありません。実行の結果が失敗・成功のどちらであっても、2回目のループに入ったり1つ前・2つ前まで戻って方向性を定め直したりします。
ループ2巡目の観察では、実行の結果という結果が加わり、刻一刻と変わる市場の状況や競合の動向も分析して新しい施策の打ち出しが可能。ループが早いほど急な市場の変化にも対応できるのがポイントです。
時にはActが失敗に終わることもありますが、OODAループの中では新たな情報源がひとつ増やせたと捉えて、どんどん次に進みましょう。
PDCAサイクルと何が違う?OODAループとの違い
PDCAサイクルも、ビジネスの場ではおなじみのフレームワークです。OODAとよく比較されますが、優劣があるのではなくシーンに応じて使い分けるのが大事です。具体的にどのような違いがあるのか、分かりやすく解説します。
PDCAサイクルとは?
PCDAサイクルとは、最初に目標に基づいた計画からスタートするフレームワークです。OODAループと同じく、各工程の頭文字をとっています。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
最初に具体的な数値目標も盛り込んだ計画を定めるため、とるべき行動が明確です。Checkの段階で結果を検証し、目標を達成できたか・計画通り行動できたかを分析。Actionで改善点を洗い出し、次の計画を練り2巡目に入ります。
OODAループとPDCAサイクルの違いをわかりやすく解説!
OODAループは、1ループする間に工程を戻ったり進んだりの繰り返しが可能です。個々での観察から始まり戦略を決めるまで時間をかけるため、常に市場の動向を取り入れられます。
一方のPDCAサイクルは一方通行で、4つの工程を1つずつ順番にこなして1セットとなります。最初に目標を設定して計画を立てるため、メンバーの意思を統一しやすくチームで取り組みやすいです。
OODAループは個々の意見をまとめていく手法、PDCAサイクルは全体を意思統一してひとつの目的に向かって進む手法と言えます。
OODAループとPDCAサイクルの使い分けポイント
OODAループは、市場環境の変化が激しい環境に向いています。状況に合わせて観察まで戻ったり、分析からやり直すなど、柔軟で迅速な意思決定が可能です。
PDCAサイクルは、目標に向かって集中して取り組めるのが特徴。数値目標があるため、改善点を見つけやすいでしょう。変化が激しい環境よりも、安定した環境が向いています。
OODAループは自由度が高く、社員に自主的に動いて柔軟な発想が欲しいときに利用するのが効果的です。PDCAループは目的に対して1本道のため、最初に目標設定がしやすいシーンで活用しましょう。
OODAループが適している場面
OODAループは、環境が変化するのが前提で目標設定のプロセスに重きを置いたフレームワークです。トップダウンではなく、常に現場の状況をくみ取り柔軟に目標を設定したい場面に適しています。
- 市場の変化に対応できるスピード感を重視したい
- 個々で自主的に改善点を見つけ目標設定できる
- 現場の実情に合った施策を打ち出したい
競合店が近隣に出店するなど、市場の変化に対応しやすいのはOODAループです。新製品の開発・生産をしたい現場では、競合の状況や自社の生産能力を見ながら柔軟な目標設定が可能です。
PDCAサイクルが適している場面
PDCAサイクルは、主に生産性の改善が目的です。安定した市場環境で、ルーティーン化した作業に目標を設定する場面に適しています。
- 生産コストを削減するための施策に取り組みたい
- 過去の実績をもとに具体的な数値目標を設定できる
目標達成に向けてどこに改善点があるかを分析し、実行して習慣化できれば生産性の改善に役立ちます。実践前から明確な目標が設定できる場面では、PDCAサイクルのほうが効率よく目標達成に向けて動けるでしょう。
OODAループの重要性
OODAループは、現代の不安定で少し先も予測しにくい環境に適したフレームワークです。今まで安定してニーズのあった職業や製品も、IT化やグローバル化で環境の変化をいち早くキャッチして方向性を定める必要が出てきました。
消費者のニーズはより細分化、SNSが一般化して流行は瞬く間に広がり収束します。PDCAサイクルではBtoB、BtoC市場のどちらでも急な変化に対応しにくく、OODAループの重要性が高まっている状況です。
職場環境の視点では、従来のPDCAサイクルによるトップダウン方式よりも個人の自主性に任せたOODAループが魅力的に映るケースもあります。業種や職場環境により向き・不向きはありますが、PDCAサイクルで成果が上がらない場合はOODAループも要検討しましょう。
OODAループをマーケティングで活用するメリット
変化の激しい市場でのマーケティングには、OODAループ活用のメリットは大きいでしょう。
- 市場の急変にも追いつけるスピード感
- 現在の状況に合わせた施策の提案、実行
上記2つのメリットについて詳しく解説します。
【メリット①】スピーディな改善・解決ができる
OODAループは、実行に移すまでの工程を何度も繰り返せます。施策決定後に市場が変化すれば、変化に対して再び方向性を定めて迅速な戦略の立て直しが可能です。
最初に無理な数値目標を設定することもないため、ループを繰り返して失敗からでも改善点が見つけやすくなります。よりスピード感を持って解決するには、OODAループを回すスピードを上げるのが重要。
何度も観察と検証、実行を繰り返し、市場の変化を取り入れてマーケティングの成功につなげます。
【メリット②】状況に合わせた施策を実行できる
OODAループでは、途中で決定した方向性や施策を変更できます。状況が変わったらいつでも工程を戻してやり直しができるのが、OODAループのメリットです。
大目標に基づいた計画ではないため、上からの指示を待つのではなく現場判断でやる直せる点もポイント。個々の社員で顧客のニーズや市場変化、競合情報をいち早くキャッチして施策に取り入れましょう。
OODAループをマーケティングで活用するための注意点・コツ
OODAループを活用には、メリットばかりではなく注意点もあります。
- 一定の統制が必要な中・長期計画には不向き
- 失敗を問題視しない
- 個人ではなくチームで目的を共有
注意するポイントが分かれば、マーケティングで活用するコツも見えてきます。
【注意点・コツ①】中・長期的な計画にOODAループを使用しない
OODAループは、良く言うと柔軟性の高いフレームワークですが、悪く言えば「行き当たりばったり」です。目標が不明瞭になり、個々で見る方向がバラバラになりがちなので、中・長期的な計画には向きません。
個人を重視するフレームワークのため、組織の統制が取りにくい点もデメリットとしてあげられます。中・長期的な計画を達成するには、全員がひとつの明確な目標に向かって行動する必要があるためPDCAサイクルが向いているでしょう。
【注意点・コツ②】失敗を恐れない
OODAループはスピード感を重視して何回も繰り返すのが前提のため、失敗を恐れてはいけません。OODAループは状況に合わせて逐一方向性を練り直すため、定量的なデータが残りにくい欠点もあります。
最適なマーケティング施策を打ちだすには、OODAループを繰り返して分析を深め、市場の変化をいち早く取り入れていくことが重要です。PDCAサイクルとの並行は難しいため、失敗を引きずらずに次の工程に移りましょう。
【注意点・コツ③】チーム内で目的を共有しながら進行する
個々の意見を尊重して方向性を定めていくOODAループでは、徐々に声の大きい社員の決定権が大きくなってしまうケースがあります。また、思い付きの発言で方向性を見誤りやすい点もデメリットです。
OODAループをうまく活用するためには、チームの協調性と目的の共有が重要。目的や方向性は定期的に共有し、客観的な数値データも用いながらチームを意識して進行しましょう。
まとめ
OODAループは、急速な市場環境の変化に対応できるフレームワークです。メリットはもちろん、デメリットをカバーするコツも押さえてマーケティング施策の打ち出しに活用しましょう。