かたちあるモノではなく、特性を持つ「サービス」。通常のマーケティングとは異なる「サービスマーケティング」のアプローチが重要となります。しかし、具体的にどのような戦略で、どんなやり方があるのでしょう。
この記事では、サービスマーケティングと通常のマーケティングの違い、「サービス」の特性、サービス・マーケティングを語る上で欠かせないフレームワーク7Pについて、簡単にわかりやすくまとめています。理解を深めるため、ぜひご一読ください。
目次
サービスマーケティングとは?意味と特徴をわかりやすく解説!
サービスマーケティングとは、物理的な商品ではなく、提供する「サービス」や「経験」に焦点を当てたマーケティングのことです。このアプローチでは、顧客に対して提供されるサービスを効果的に宣伝し、顧客へ価値を提供することに注力します。
サービス提供者が顧客ひとりひとりのニーズや要求、感情を理解し、その期待に応えるための戦略を開発します。また、顧客体験の向上、ブランドイメージと信頼関係の構築、口コミなどを通じ、サービスの品質アップと顧客満足度の維持・向上が大きな目標となります。
マーケティングとサービスマーケティングの違い
マーケティングとは、商品やサービスの販売に関する広報・広告や戦略の総称を指します。
一方でサービスマーケティングは、「サービス」や「顧客体験の提供」にフォーカスしています。サービスの不可分性や不均一性、顧客の参加度などを考慮した、特別なマーケティングアプローチなのです。
両方のマーケティングには、異なる戦術とアプローチが必要です。対象となるビジネスの性質に応じて、選択しましょう。
「サービス」の特性
サービスマーケティングの”サービス”の特性について、詳しく見ていきましょう。
無形性・非有形性
物理的な形のないサービスは、見て・触れることができません。健康保険・コンサルティング・エンターテイメント・教育などがその例です。
このため顧客に具体的な価値を伝えるのが難しく、提供するサービスのイメージ、顧客の口コミ等体験談、信頼性などの要因にフォーカスし、効果的なコミュニケーションが必須となります。
同時性・不可分性
サービスは提供と消費が同時に行われ、提供者と顧客の間で密接な関係が発生することを指します。例えばエステサロンの施術、レストランでの料理の提供・給仕などが該当します。
利用者がサービスを消費する際に提供者と直接関わり、相互の対話や作用が発生するため、顧客体験の向上が重要です。
消滅性・非貯蔵性
一度提供されたサービスは時間の経過とともに消失され、未使用の場合でも再利用・貯蔵ができません。ホテルの空室や飛行機の未利用座席、美容院の予約などがその代表例です。
需要と供給のタイミングを見極めて効果的に管理し、最大限提供するための適切な戦略が必要です。
異質性・変動性
サービスは提供内容が同じであっても、扱う担当者や環境、時間帯などにより品質や効果が変わります。同じ店であっても、料理の味付けや受付対応に異なる評価を受けてしまうのがその例です。
対策としては、品質管理や従業員トレーニングの徹底、手順のマニュアル化、顧客からのフィードバック収集などが有効です。
サービスマーケティングに欠かせないフレームワーク「7P」
「7P」は、通常のマーケティング・ミックスの「4P」に、サービス特有の要素を加えたフレームワークです。
英語の「P」から始まる7つの要素を管理することで、消費者へ提供するサービスの品質・効率性・顧客体験の向上を目指します。優れた価値を提供し、競争優位性を維持するため、戦略立案やサービス設計、適切な価格設定、魅力的な広告、スタッフトレーニングの徹底、プロセス改善などの観点で適用されます。
マーケティング・ミックスの「4P」とは
「4P」は、マーケティング戦略を構築するための基本要素を示すモデルです。4Pは、Product=製品、Price=価格、Place=場所、Promotion=販売促進の4つの要素で構成されます。
これは商品やサービスの需要調査から市場投入、価格設定や流通戦略、広告キャンペーンの計画に至るまでさまざまなプロセスで使われ、マーケティング活動の効果を高めるために役立てられています。
サービスマーケティングの「3P」とは
サービスマーケティングの「3P」とは、People=人、Physical Evidence=物的証拠、Process=プロセスの3要素のことです。これは、サービス提供者、物的証拠、手順の改善が、サービス品質の向上と顧客満足度の維持につながることを表しています。
物理的な商品が存在しないサービス業界において特に重要な項目であり、これらの要素の効率的な管理がサービスマーケティングの成功に大きく影響します。
Peple、Personnel(人)
Peopleには、直接的なサービス提供者、提供を支えるスタッフ、そして顧客が含まれます。サービス業界においては提供者と消費者との間に相互作用が頻発し、顧客満足度に貢献するのです。
スタッフのトレーニング、動機付け、コミュニケーション能力の向上などにより接客の質を高めることで、満足度の向上と競争優位性の獲得を後押しできます。
Physical evidence(物的証拠)
無形のサービスの品質価値を視覚的に示す要素で、店舗の外観・内装や装飾、清潔さ、設備、案内書、資料、ライセンスや認証などが含まれます。
信頼性や安心感を提供することで、顧客にサービスの品質や価値を実感してもらい、購入の意思決定や忠誠心に影響を与えます。特にサービス業界では、顧客体験を向上させるための重要な項目です。
Process(プロセス)
サービス提供の手順、効率性、品質管理、顧客の参加率などを指し、体験と品質の向上に貢献する要素です。この項目を改善できれば、顧客はスムーズで信頼性の高いサービスを受けられることになり、結果として満足度が向上します。
プロセスは、サービス業界で競争力を強化するために注力すべきポイントです。
サービスマーケティングの成功事例
最後に、サービスマーケティングの具体的な成功事例を2つ、ご紹介します。
①ディズニーリゾート
ディズニーリゾートでは、非日常を演出する独自のプロダクト(Product)、ブランド力に裏打ちされた価格(Price)、アクセスしやすい場所(Place)、多角的な広告展開(Promotion)に加えて、顧客中心のアプローチで来場者の幸福感を最優先に設定しています。
キャストには高度なトレーニングを行い、ゲストへ上質なサービスを提供(People)し、常に顧客体験を向上させています。また、ストーリーテリングを活用して魅力的な空間を創出(Physical evidence)するほか、徹底した一貫性を維持。顧客エンゲージメントを促進し、リピーターの増加も実現(Process)しています。
まさに「7P」を網羅することで、サービスマーケティングを成功に導いている好例です。
②マクドナルド
マクドナルドもまた、サービスマーケティングの「7P」を実践し、成功を収めています。
季節限定メニューなどを含む多彩な商品を開発(Product)、競争力のある価格の設定(Price)、世代を問わず誰でも利用できる各地での店舗展開(Place)、印象に残る効果的な広告(Promotion)、「スマイル0円」に象徴される高度なトレーニングを受けた従業員の接客(People)、最先端のテクノロジーを導入し統一感ある店内環境(Physical evidence)、別々のカウンターでの注文と商品の引き渡しといった高効率な提供プロセス(Process)を徹底しています。
顧客に多様な選択肢と迅速なサービスを提供し、ブランド認知と忠誠度を高めている成功事例のひとつです。
まとめ
一筋縄ではいかないサービス業界。サービスマーケティングに注目し、成功を収めましょう。