サンプリングは、無料で試供品を配布するセールスプロモーションです。
広告やCMとの大きな違いは、実際の商品を使用してもらい、商品の使用感や魅力を直接伝えられるところでしょう。認知度向上や見込み客の獲得に効果的で、商品やターゲットに合わせて手法を選べるため、多くの企業が採用しています。
今回はサンプリングの手法や、メリット、デメリット、注意点について解説します。
マーケティングにおける「サンプリングとは?」意味や役割を解説!
マーケティングにおけるサンプリングとは、商材の認知度向上、商品理解、ブランディングなどを目的として、実際に商品を試用してもらう施策のことを指します。使用感が確かめられることで、商品を購入したことがない消費者に魅力を伝えることができ、見込み客になる可能性があります。
しかし、ただサンプルを配布すれば良いというわけではありません。 サンプリングは無料で試供品を配布するため、無計画に行うとコストがかさみ、売上でカバーすることが難しくなる場合も。
サンプリングを効果的に行うためには、ターゲットを明確化し、手法や時間を見極めることが大切です。
サンプリングの代表的な手段・方法
サンプリングには、いくつか手段と方法があり、それぞれに特徴があります。サンプリングはコストがかかるため、商品やサービスに合わせた手段を選び、アプローチの仕方を間違えないようにすることが大切でしょう。
ここでは、サンプリングの代表的な手法・方法を紹介します。
1.街頭サンプリング
街頭サンプリングは、駅の出入り口や、店頭、施設周辺など人が集まる場所で商品を配布する方法です。不特定多数の人にサンプルを渡せるため、年齢や性別を問わず商品の認知度を高めたい場合に向いています。
ターゲットとする層がある場合には、ターゲットに合わせた場所選びや時間帯の設定しましょう。 ターゲットの行動時間や場所を事前に調査することで、効率よくサンプリングできます。
たとえば、ターゲットが学生や社会人の場合には、朝夕の通勤時間帯で、通勤手段と成る主要駅やオフィス街、学校周辺が適しています。主婦の場合は、買い物時間帯の13〜17時ごろに、スーパーマーケット周辺でのサンプリングがいいでしょう。ファミリー層の場合には、日中の住宅街に近い駅周辺や、土日の商業施設周辺がおすすめです。
2.ルートサンプリング
ルートサンプリングは、商品やサービスの販売ルートに関連する店舗や施設の会員に対してサンプリングを行う方法です。受付やカウンターに設置して気になる方が自由に手に取れるようにしたり、訪れた方や訪問先で直接手渡す方法があります。
ルートサンプリングでは、配布エリア、年齢、性別、趣味趣向などの属性をある程度しぼることができるため、潜在層へのアプローチが可能で、費用対効果の高いところが特徴です。
主なサンプリング場所は店舗、施設、会社、学校、保育園、習い事の教室、自宅などがあります。
3・店頭購入型サンプリング
店頭購入型サンプリングは、店頭にある商品を実際に購入してもらいトライアルの機会を作るサンプリング方法です。従来の無料で配布するサンプリングとは異なり、店舗を訪れ購入する必要がありますが、商品代金はポイントとして還元されるため消費者は実質無料で試せます。
POSデータで収集できるため、リピート率を計測し、サンプリングの効果測定が容易にできるだけでなく、店舗の雰囲気や、商品、接客状況なども知ってもらえるため、サンプリング商品のアピール以外のメリットも。
サンプリングを行うメリット
サンプリングは無料で商品を配布するため、コストがかかるマーケティング方法といえます。しかし企業にとってはそれ以上のメリットがあります。
サンプリングを行うメリットを紹介します。
【サンプリングのメリット①】見込み客へ商品を訴求できる
サンプリングの最大のメリットは潜在客に商品をアピールできることでしょう。
新製品や気になる商品でも、購入したことのない品は「失敗したら嫌だから止めておこう」と考え、従来の商品を手に取ってしまう消費者も多くいます。
しかしサンプリングを行うことで、消費者はお金をかけることなく商品の価値や自分に合うかを確かめることができます。試しに使用して商品の魅力に気付いてもらえれば、新商品を購入することに対する不安がなくなり、購入するきっかけを作れます。
【サンプリングのメリット②】商品認知度があがる
サンプリングは、商品認知度を高めるために効果的です。
どれほど優れた商品でも、知られていなければ購入してもらえません。サンプリングすることで、これまで商品やサービスを知らなかった方にも、存在を認知してもらえるでしょう。
商品認知度を高めるだけであれば広告でも可能ですが、サンプリングは広告と違い、実際に商品を試してもらえます。サンプリングで広く商品が認知されることで、ターゲット層以外の顧客を獲得できる可能性を秘めています。
【サンプリングのメリット③】顧客情報を入手できる
サンプリングは顧客情報の入手も可能です。例えば、アンケート記入後にサンプルを渡すような手順にすると、商品に関心がある方の情報を得られるため、今後も継続してアプローチできます。
ルートサンプリングや街頭サンプリングの場合には、サンプルを店頭で交換する引換券やクーポンにすることで、来客数を増やす効果も期待できます。
どのエリアで配布したものかわかるようにしておくと、潜在客が多いエリアの分析も可能で、新たなマーケティングにもつながります。
サンプリングのデメリットやリスク
サンプリングは商品の認知度を高め、見込み客を獲得するために効果的です。しかし、配布場所、時間、ターゲットを検討し事前にしっかりと計画を立ててから実行することが大切で、ターゲティングを見誤ると期待するような効果が見込めません。
マーケティングの手法としてサンプリングを検討している場合は、効率的なサンプリングを行うためにデメリットについても理解しておきましょう。
【サンプリングのデメリット①】商材により向き・不向きがある
サンプリングには、商材により向き・不向きがあります。
向いている商材は、受け取りやすく使いやすいものです。 小分けして配れる消耗品やクーポンは、サンプリングと相性が良いと言えます。 具体的な商品名をあげると、化粧品、洗剤、入浴剤、飲料、健康食品などは、実際に試してみることで、商品の理解が深まり、購入につながる見込みがあります。クーポンは、お得に商品やサービスを受けられるため、購入促進に効果的です。
一方でサンプリングに向かないのは、単価が高いものや需要が限定的な商材です。サンプリングは無料で試供品を配るため、単価が高いと費用がかさんでしまいます。 また需要が限定的な商材は、受け取ってもらえなかったり、使われないことがあるので、サンプリングの効果が出づらい傾向があります。
【サンプリングのデメリット②】配布コストがかかる
サンプリングは、試供品の製造コスト、配布するスタッフの人件費、会場費、車両費、交通費などのコストがかかります。商材を無料で提供するため、コストがかかりすぎると、売り上げで回収しきれず損をする可能性があります。
無駄なくサンプリングするためには、配布エリアや配布個数など具体的にプランニングし、潜在客に届くように計画しなくてはいけません。
ターゲットから外れた方に渡すと受け取ってもらえたとしても使用されず、費用対効果が悪くなります。
【サンプリングのデメリット③】ターゲティング調査が必要
サンプリングは、無料で試供品を配るためチラシより受け取ってもらえる確率が高く、簡単に行えるマーケティング方法です。しかし、サンプリング商材がターゲットと一致しなかった場合、購入につながる見込みは低く、効果が期待できません。
サンプリングの目的は、受け取ってもらうことではありません。 商品の認知度を高め、商品について理解してもらい、新たな顧客を増やすことです。そのため、顧客になる可能性がある方を見極める事前のターゲティング調査がとても重要となります。
サンプリングを行う上での注意点
サンプリングは、ただ試供品を配れば良いというわけではありません。
商品について良い印象を持ってもらうためには配布スタッフの教育も必要です。さらに景品表示法という法律や、道路使用許可が必要になることもあります。
マーケティング活動でトラブルを起こさないためにも、サンプリングを行う上での注意点を理解しておきましょう。
【サンプリングの注意点①】配布スタッフの教育と育成
サンプリングは、既存の社員だけでなくサンプリングのためのアルバイトを雇い、任せることが多いようです。
作業自体は簡単ですが、自社の商品を見込み客に直接手渡すため、配布スタッフの立ち振る舞いひとつで、企業の印象を良くも悪くもする可能性があります。 配布スタッフの対応で、サンプリングの効果が左右されてしまうのです。
サンプリングの効果を上げ、見込み客に不快な思いをさせないためにも、配布スタッフには適切な対応ができるよう教育と育成をすることが大切です。
【サンプリングの注意点②】景品表示法
サンプリングは、景品表示法という公正かつ自由な競争を担保し、消費者を過度に煽らないための法律が関わります。
景品は条件により共同懸賞、一般懸賞、総付景品の3つに分類され、サンプルは総付景品に分類されています。 総付景品の限度額は取引価額1,000円未満の場合、最高200円、1,000円以上の場合、最高で取引価額の20%です。
しかし、サンプルは総付景品ですが、例外として景品表示法の制限を受けないものとして定められいます。ただし、最小単位で配布することや、試食品・試用品と提示する必要があります。
【サンプリングの注意点③】道路使用許可証
街頭や歩道でサンプリングを行う場合には、道路使用許可証が必要です。道路使用許可を取らずサンプリングを行った場合には、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
道路使用許可を取るためには、サンプリングを実施する場所を管轄する警察署へ申請を行います。申請には道路使用許可証、地図、平面図、配布物の4つが必要です。
配布場所は配布形態によっては、ほかにも必要になる書類がある場合があるため、管轄する警察署にて確認してください。 承認には3〜7日程度、状況によっては1週間以上かかる場合もあります。 余裕をもって申請しましょう。
まとめ
サンプリングは、商品の認知度を高め、見込み客獲得に効果的なマーケティング方法です。
しかし、ただ配布すれば良いというわけではなく、ターゲットとなる層にアプローチすることが大切です。事前のターゲティングができていなければ、売上でカバーできないほどのコストがかかる可能性があります。また、景品表示法の知識や、道路使用許可証の取得など事前準備も必要です。
商品に適したサンプリング方法やサンプリング場所を考え、計画的に行いましょう。